劣等遊民

千の旬に会うために。

動けデブセン

 太ることしか脳がないのか。

 75kgの体は重たい。腹に一物抱えているとはこのことか、と思う脂肪の量である。運動しても楽しいよりはストレスになる。
 僕はプールで泳ぐ。息が上がったら水中を歩く。水面下に顔を浸して、鼻からあぶくを吐き出し進む。時折昂り、ドルフィンキックで鈍い破裂音を引き出す。水に馴染み、水と和解しようとする。遠い祖先が暮らした海の、その理不尽さを受け入れてみたいと思う。わずかな空気を含む粒が、無数に僕の体から離れ、水と戯れては消えてゆく。
 30分ほど動いた後にジャグジーへ行き、軽くシャワーを浴びて上がる。塩素かそれとも体臭か、なんともいえない匂いが全身を纏った。面倒なので鈍感になって、家で赤だしうどんを食す。アサリが入って、麺を啜る単調な行為に変化が生じた。母から肥りすぎだと小言を喰らい、所在なさげに贅肉をつまむ。本気で嫌そうな顔をされた。

 今すぐ痩せることはできない。そもそも何をもって「痩せた」とすればいいのか。多少数値を下げたところで外観はそう変わらないだろう。60kg台まで落としても、筋肉が無く姿勢も変なら、却って見栄えが悪くなるのでは?
 しかし愚痴を言っても仕方がない。喋るだけでは太った自分をどうすることもできないのだから。まずは明日から早朝ウォーキングを始めよう。地道を往かずして成功なし。