劣等遊民

千の旬に会うために。

ひずみ発つ文学

 二日酔いと精神的な疲労で仕事が手につかない。疲れる理由がわからないから余計に疲れる。
 人間は弱みに打ち克つために生きているのではない。僕は脆く、とうてい使いものにはならない。その目が見る世界は儚い。桜が散るとき秘かに像を結ぶのは、己を刃で八つ裂きにする武士の貌である。

 狂え、と思う。世界がまともで行くなら僕はがさつにやっていくだろう。時代が駆け抜けていくならば僕はこの場に引き籠ろう。極を作れ。匙を投げろ。腔を掻き乱せ。
 徒党は組まない。縦にも横にも並ばない。歪な個としての人があり、始末の悪い凸凹を埋め合わせんともがく。その営みに眼を開き、紫の光を捉える。
 書かねばならない。書かずにはいられない。端が汚れたルーズリーフに僕の企てと版図が浮かぶ。インクの掠れたボールペンが、先走り美辞麗句を排し、とめどない事実誤認と自家中毒の世界をひらく。きらびやかでいまいましい夢の国の、現実ではありようのない態を記す。それだけにきつい仕事である。

 なにもかもひずんでいる。立ち竦む僕は背中を打たれ転げ落ちる。その先は闇で何も見えない。光亡き中でいっとう暗く、黒い粒子の群れが視界を横切る。はりつく羽虫のような粒は僕を苛立たせ、意識は退がり原初の恐怖、太古の暴力に支配される。腹が硬くなる。張り詰めた空気が淀み、非人道的な耳鳴りがする。
 仕事に打ち込み電車で眠り晩飯を食う一連は、大した意味をもたず横たわる。

 すべては燃えてしまいました。これからのことは次善の策です。